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量産型小型電気バスは日本初
BYDの日本法人であるビーワイディージャパンは3月25日、量産型のノンステップ小型EV(電気自動車)バス「J6(ジェイシックス)」先行予約の受注を開始した。価格は1950万円(税別)で、納車開始は2020年春を予定。
Source: CarWatch(2019/03/25)
各メディアの報道を総合すると、骨子は以下のとおり。
- 車名:J6(ジェイシックス)
量産型のノンステップ小型EV(電気自動車)バス - 先行予約開始:2019年3月25日
- 車長×車幅×車高:6990 × 2060 × 3100mm
- 航続距離:最大200km
(乗車率65%、エアコン未使用) - 充電時間:3時間
- バッテリー容量:105.6kWh(鉄系電池)
- 車両タイプ:
都市型I(31人/1扉)
都市型II(29人/2扉)
郊外型(25人/1扉) - 車両給電:可能
災害時は非常用電源として利用可能 - 販売目標台数:1000台(2020〜2024年)
- 価格:1,950万円(税抜)
国土交通省の補助金対象 - 納車開始:2020年春
将来の展望として、2020年に自動運転化、2021年にVtoHおよびVtoV、2022年にはVtoGridを狙うとしています。
日野ポンチョとガチ競合
BYDの電動バスで注目すべきはまず価格。
税抜き1,950万円ですが国土交通省の補助金の対象となりますので、実質はもっと安くなります。
ガチ競合するのは日野自動車のポンチョ(税別1643〜1675万円)ですね。

日野ポンチョ
BYDのJ6は2020〜2024年で1000台の販売を計画しているとのことなので年間250台ぐらいのイメージですが、ポンチョの販売台数も年間300台なので、販売台数的にもガチ競合。
なかなかおもしろい戦いになりそうです。
いま電動バスが求められている理由
2030年パリ協定達成に向け、⽇本でも CO2 排出量削減の取組として「環境負荷の少ない⾃動⾞の普及及び使⽤の促進」、「⾃家⽤⾃動⾞から環境負荷の少ない公共交通機関への誘導」が重要課題となっています。
このような背景のなか、BYDはこれまでに京都市、那覇市、会津若松市、盛岡市などで大型・中型路線バスを先行投入してきたところ、各地の事業者からの引き合いが多いことをうけ、今回は地方などで強く求められている地域住人の交通手段という需要を電動車両で満たしていく方針を示しました。
つまり電動バスは日本が国際社会の一員として責任を果たすための手段として、重要なピースを担っているのです。
惜しむらくはコレ中国のBYD製なんだよね。
まあ日本のメーカーがEVバス作ってくれないから仕方ないか。
— ごぼうし@電気自動車VTuber (@evjournal_jp) 2019年3月25日
必要十分な航続距離
次に注目すべきは航続距離。
BYD J6はフル充電、乗車率65%、エアコン未使用で最大200kmとのことですが、日野ポンチョがざっくり燃料タンク容量が100Lで燃費が6.4km/Lなので航続距離は640km程度といわれ、やはりスペック上は現状のEVの性能では太刀打ちできません。
バッテリーのスペックは明らかになっていませんが、おそらくBYDが得意とするリン酸鉄リチウム電池が使われているものと推測されます。
BYDのEVバス、どうやらバッテリーはリン酸鉄リチウム電池みたいですね。
どうりで価格が安いはずだわ。
そして鉄系はコバルト系やニッケル系、マンガン系に比べて性能は劣るけど、繰り返し充電に強く安全性も高い。
中国市場を席巻してるBYDは本気でポンチョの牙城を崩しにきてるな🚌
鉄系は日本の自動車メーカーなどが採用しているコバルト系やニッケル系、マンガン系に比べるとエネルギー密度や出力密度が小さいため重量や性能の面では劣りますが、原料が酸化鉄であるため低コストで、釘差しなどでも発火しにくく安全性が高く、そして繰り返し充電に対する寿命が長いというメリットもあります。
路線バスの平均的な1日の走行距離は約100kmといわれますが、BYD-Jの調べによれば路線バスについては1日約150km。データの出どころによって多少は数字は異なりますが、まあ路線バスに要求される性能はんてこの程度ですよ。
この使い勝手を考えると、実用上はリン酸鉄リチウムイオン電池のEVであっても補充電なしで終日運行できそうです。


むしろあんまり知られてませんが、ディーゼルエンジンのバスは軽油のほかに尿素水(adBlue)を入れる必要があるので、駐車中にコンセントからケーブルぶっ挿しとくだけのほうがラクなんじゃないでしょうかね。特に地方ではガソリンスタンドも減ってますし。
自動運転化にも積極的
BYDはしれっと「2020年に自動運転化」なんてことも言及しています。
さすがにテスラみたいにソフトウェアのアップデートで対応とはいかないようですが、
ビーワイディージャパンは緊急時に運転手が操作する「レベル3」の自動運転機能を後付けできる製品も、20年に販売するという。日本で導入済みのEVバスや今後販売の小型EVバスに搭載可能で、自動運転バスでも先陣を切りたい構えだ。
ということで既販車へのサポートも抜かりナシ。
BYDが自動運転を意識してきたというのは注目すべきポイントで、J6のような小型バスは交通弱者の高齢者や過疎化が進行している地方においてニーズが高まることが予想されます。
一方で、こうした地方の暮らしを支えるバス事業者の経営環境は極めて厳しい状況で、国交省の資料によればバスの運行経費のトップ2は人件費と燃料油脂費であることが示されています。

Source: バス事業者の経営状態、経費構成等
このようなバス事業者の経営課題に対して、「EVと自動運転」というソリューションを競争力のある車両価格で投入してきたというのは非常に期待がもてるところです。
っていうか、海外メーカーのほうが日本の地域交通の問題点を真摯に受けとめてるじゃないだろうか・・・。
ビーワイディージャパン花田副社長「交通弱者の高齢者が増え、地方では路線バスの需要が増える。低価格でEVを普及し、電動化社会を進めたい」
このセグメントはBYDのほかにイージーマイル、ナビヤなど海外勢だらけ(一部ヤマハ)。
日本の高齢化は海外からはビジネスチャンスと映ってるんだろうな。
BYDの乗用車が日本に上陸する可能性は?
ちなみにBYDが主力の乗用車を日本市場に投入する可能性については、
25日に都内で記者会見した同社の花田晋作副社長は、主力の乗用車を日本市場に投入することに関し、「EVの市場規模が小さく、日本での展開はない」と強調。
とアッサリ否定。
なんかここまで言われると寂しいね・・・。
中国は乗用車の型式認定に関する国際的な相互承認協定に入っていないので輸出のハードルが高いですが、BYDは2013年にブルガリアで電気自動車(EV)のバスを合弁生産するにあたって車両販売統一型式認証(WVTA)を取得しているので、日本への輸出が可能になっています。
さらに2019年現在ではハンガリーにもEVバス工場を保有しています。
したがってBYDのEVバスビジネスは今後もますます拡大していきそうですよ。
では最後にBYDについてご存じない方のために、企業情報をサラッと。
- 社名:比亜迪股份有限公司(略称:比亜迪またはBYD<ビーワイディー>)
- 所在地:中国・深圳
- 創業年:1995年
(※BYDモーターは2003年) - グループ企業各社を通じて、IT部品(二次電池、携帯電話部品・組立)と、自動車の2大事業を展開している。リチウムイオン電池の製造で世界第3位、携帯電話用では世界第1位のメーカー。
- ウォーレン・バフェット氏が投資していることでも知られる。
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