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なんかさ、みんな燃料を燃やすとCO2しか出ないとか思ってない?

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バイオ燃料なら無罪放免?

年始から香ばしい記事がありました。

電源構成の抜本的見直しが実施されない限りEVの普及はCO2削減の効果はない。2030年を経由して2050年以降の最終形態にいくまでは、いくつかのエネルギーが混在すると考えられる。長期的に電源構成が大幅に見直されてCO2を排出する火力発電所が廃止され、再生可能エネルギー由来の電力が主要な電力源となることでEVがカーボンニュートラル走行するのと同様に、前記したようにFCV、HEV、NGVについても再生可能エネルギー由来の燃料が使われるようになって、カーボンニュートラル走行するようになる。

Source: MotorFanTECH2019/1/2

マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士と称される人物の論説らしいが、バイオ燃料でエンジンが無罪放免になるなんて本気で思ってたらちょっとヤバいぞ!

 

挙句の果てには、東京オリパラの聖火で水素を燃やそうとか言いだすアホも現れましたw

2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会で環境対策などを協議する有識者の諮問会議は26日、聖火台や聖火リレーのトーチに水素やバイオ燃料などを採用すべきだと決議した。

Source: サンスポ.COM2018/12/26

 

・・・なんかさ、みんな燃料を燃やすとCO2しか出ないって勘違いしてない?

 



二酸化炭素(CO2)以外の大気汚染物質

エンジンで燃料を燃やすと、CO2以外にも様々な大気汚染物質が発生します。

 

代表的なものを下に挙げますが、総論としては燃焼に供給される空気と燃料の混合比を薄くしようが濃くしようが、全ての大気汚染物質が少なくなるバランスポイントというものは存在しない、という特徴があります。

すなわち排ガスは「あちらを立てればこちらが立たず」というジレンマの産物なのです。

Source: 自動車工学2004年7月号

 

それでは主要な排ガス成分についてご紹介します。

 

窒素酸化物(NOx)

NOxはNO(一酸化窒素)とNO2(二酸化窒素)などの窒素酸化物の総称。

物質が燃焼する際に空気中の窒素と酸素が結合して発生する物質であり、燃料がガソリンだろうが水素だろうが空気中で燃焼する限り必ず発生します。

二酸化窒素(NO2)は強い酸化作用を示して細胞を傷害するので、粘膜の刺激、気管支炎、肺水腫などの原因となります。酸性雨の原因物質でもあり、一酸化二窒素(N2O、亜酸化窒素)は二酸化炭素の310倍の温室効果があることも知られています。

2017年7月に首都圏で発生した光化学スモッグ

 

一酸化炭素(CO)

炭素を含むガソリンなどの燃料が燃焼すると二酸化炭素が発生しますが、酸素の供給が不十分な環境で燃焼すると一酸化炭素が発生します。

水素を燃焼した場合は発生しませんが、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでは酸素の供給が不足する燃焼状態になると生成されます。

無色・無臭の物質ですが、高濃度で吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し頭痛・耳鳴・めまい・嘔気などの中毒症状を呈し、対処が遅れると体の自由が利かなくなり、昏睡・呼吸困難により死に至る危険性のある物質です。

一酸化炭素中毒は雪で車が立ち往生したときに死亡事故になるやつです

 

粒子状物質(PM)

粒子状物質とは、固体及び液体の粒子の総称。

主に石炭や軽油など炭素系燃料の燃焼で生じたや、ガソリンなどの石油系物質の揮発成分が大気中で変性することで生じます。

粒子状物質は主に人の呼吸器系に沈着して健康に影響を及ぼします。粒子の大きさによって体内での挙動や健康影響は異なるといわれていますが、呼吸器系に弱い方は死亡率の上昇などにつながる場合もあります。

数年前の北京はPM2.5に覆われていました

 

炭化水素(ハイドロカーボン、HC)

HCは炭素と水素だけからなる有機化合物の総称です。結合様式によって分子量は異なりますが、石油や天然ガスなど化石燃料の主成分。

エンジン内部で燃え残ったガソリンや軽油の成分が外部に放出されることで発生します。また石油系物質の揮発成分が蒸散したり、樹脂部品などから透過することによっても発生します。

地球温暖化光化学スモッグの原因物質です。

Source: carview2018/11/19
ガソリンは給油するだけで大気汚染になります

 

まとめ

エンジンというものは原理的にバイオ燃料を使おうが再生可能エネルギーから合成された物質を使おうが、空気中で燃料を燃やした時点で様々な種類の大気汚染物質が排出されます。

したがって自動車のパワートレインの環境負荷について真面目に論ずるのであれば、CO2だけで評価するのは不十分です。

 

現代の自動車は、排ガスに含まれるさまざまな汚染物質の排出を低減するためにマフラーに高価な貴金属触媒を使用し、またソフト・ハードを駆使したアクロバティックな燃焼制御がおこなわれています。

このことは少しでもクルマの構造を知っている人であれば誰でも知っている事実であるはずなのに、不自然なことになぜか電気自動車vs内燃機関の文脈ではCO2しか議論に挙がりません。

電気自動車の電力を賄う火力発電所からも排ガスは放出されますが、出力変動が大きく小型・軽量化が求められる自動車用のエンジンと、運転状態が限定的で排ガスの後処理能力にも余裕がある発電所のコンバインドサイクルのガスタービンエンジンでは、各排出成分の量もエネルギー効率も全く異なります(もちろん火力発電所のほうが優秀)。

 

CO2の排出削減ももちろん重要ですが、都市部や新興国などで問題となっている大気汚染や健康被害にダイレクトに効くのはCO2以外の大気汚染物質です。

 

クルマのパワーユニットを論じるのであれば、CO2以外の大気汚染物質についても目を向けるべきでしょう。

 

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