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二酸化炭素の排出を「量」で議論するのはナンセンス

投稿日:2018年12月12日 更新日:

EVが火力発電に頼ってるとCO2排出量は減らない、らしい

モビリティ革命やCASE車両について、とかく日本は欧米にくらべて遅れているといわれる。もちろん否定できない部分もあるが、メディアの報道だけでは、政府やメーカーのアナウンスがわかっても、現地消費者の声までは見えにくい。電動化や自動運転のトレンドは果たしてどこまで本当なのだろうか。

この点をあらためて探るべく、2人の専門家に対談してもらい、双方の知見や意見をぶつけてもらった。対談をお願いしたのは、慶應義塾大学 特任教授 岩本隆氏とローランドベルガー パートナー 貝瀬斉氏だ。

岩本特任教授は、温室効果ガス(GHG:GreenHouse Gas)削減の視点からEV化による影響を研究している。「地球温暖化対策と経済成長との両立に向けた一考察」という論文では、火力発電に頼る日本はピュアEVが普及しても大してGHG排出量は減らず、同時に産業構造の変化(部品点数の減少による製造業の縮小)から経済にもマイナスのインパクトを与えると述べている。

Source: Response(2018/12/04)

GHGは温室効果ガス=CO2のことですが、エンジン車と火力発電由来の電力を使うEVでどっちが排出量が少ないかという量的議論はすでに決着がついています。

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このデータはWell to Wheel、すなわちエネルギーの製造過程からタイヤに伝わるまでを評価したもの。

EVは東日本大震災の前後での電源構成の変化によって変動はしていますが、それでも他の方式に対して優位性があります。

 



温暖化の影響がけっこう大変なことになっている

ところで、つい先日おこなわれたCOP24で、温室効果ガスによる温暖化の影響はけっこう大変なことになっているという報告がされています。

科学者らは、早ければ2030年に、世界の平均気温は産業革命前にくらべ1.5度上昇するとしたことし10月のIPCCの特別報告書に触れ、「このままでは豪雨災害や海面の上昇など多くの地域で深刻な影響が出るおそれが高く、『パリ協定』では、1.5度に抑えるために温室効果ガスについてより高い目標設定が必要だ」と訴えました。

また、目標を達成するためには石炭火力発電から太陽光発電など再生可能エネルギーへの一刻も早い転換途上国の温暖化対策を助ける先進国からの資金面と技術面の支援などが重要だと強調しました。

訴えを聞いたフィジーの政府代表は「科学的な根拠を示してくれてありがたい。各国の政策決定者は、もはやこうした科学に背を向けることはできない」と話していました。

Source: NHK(2018/12/07)

とはいえ現実問題としてCO2の排出抑制は個人レベルでできることは限られていますので、やはりこの問題は寄与の大きい業界や企業が主体となって対処すべきイシューであると考えられます。

 

しかしながら、これまではCO2の排出を抑制すると経済成長が犠牲になるという現象、いわゆるデカップリングが生じるのが通説であったため、どうしても企業活動においては環境対策は後回しにされてきました。

 

ところが2017年にIEA(国際エネルギー機関)が公開したレポートによると、2010年以降は世界経済が成長を続けながらもCO2排出量にほとんど変化がないという傾向が現れていることが明らかになっています。

これは石炭火力発電から天然ガス発電や再生可能エネルギーへのシフトによるものであるといわれていて、当然、そのシフトの過程においては投資や技術開発など様々な消費や経済活動もともないますので、CO2排出抑制がマクロ経済の成長と両立する時代になってきているのです。

 

CO2は「量」よりも「質」が重要

さきほどWell to WheelのCO2排出量の論争はすでに決着がついていると述べましたが、実はこの計算の中に出てくる係数にはかなりバラツキがありまして、試算した時期や計算者の意思によって計算結果が大きく変動します。

さすがに日本自動車研究所(JARI)が計算に手心を加えているとは思いませんが、せっかくマツダが「ガソリン車のCO2排出量がEVに追いつく」と主張してますので、百歩譲って排出「量」はEVに匹敵するレベルまで進化すると仮定しましょうか。

「内燃機関を磨けばガソリン車のCO2排出量はEVに追いつく」。都内で今月中旬に開いた技術発表会「オートモーティブワールド」でマツダの人見光夫常務執行役員は強調した。

Source: 日経新聞(2018/01/28)

 

じゃあエンジン車の排出量がEVレベルまで抑えられれば無罪放免になるかというと、コトはそれほど単純ではありません。

エンジン車とEVの最も大きな違いは、排出されるCO2「質」

 

エンジン車のCO2はマフラーの先っぽのテールパイプから排出されます。自動車は全国津々浦々で走ってますので、大気中に薄く広くガスが放出されます。

一方、火力発電由来の電力を使う電気自動車ではCO2は発電所の煙突から排出されます。火力発電所は大小合わせても国内に200か所足らずしかないので、大気中に濃く狭くガスが放出されます。

すなわち量は同じでも、質的には大きな違いがあるのです。

 

電気自動車とCO2回収技術と組み合わせ

実は世の中ではすでにCO2回収装置なるものが実用化されています。

三菱重工は1999年にCO2回収装置の商用初号機をマレーシアに納入して以降、日本、インドと実績を重ね、現在、7基が順調に稼動しています。2010年中には、パキスタンとベトナムで同じく2基が試運転を開始する予定です。

計9基はいずれも化学プラントで発生する天然ガス燃焼排ガスからCO2を回収するポストコンバッション方式を採用し、回収した純度99.9%のCO2はそのまま尿素製造などの原料に利用されています。また、インドに納めた3基は排ガスからCO2を回収する装置として世界最大級の能力を有しています。

Source: 三菱重工

このようなものを炭素二酸化炭素回収・貯留技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)といい、日本国内でもすでに化学プラントなどで運用が始まっています。

 

発電所と一体で運用した場合だとCO2の分離・回収に少しコストが高くなることや、回収したCO2の地下貯留に関する検証が終わっていないなどの課題はありますが、経産省によれば本格的な実用化は2020年頃となるとされており運用はすでに秒読み段階

 

どうせ回収効率がすごく低いとかなんじゃないのw?
残念でしたー。CO2を50%以上回収できる火力発電はすでに国内で着工しています。

 

ちなみにCO2回収装置ってこんなのです。

どどーん!

 

とてもじゃないけどクルマには搭載できませんね。

仮に燃料電池みたいに無理やり搭載できたとしても、クルマからCO2を抜き取るインフラが新たに必要になるので現実的ではありません。

 

まとめ

CO2の排出「量」に注目して内燃機関の改善するという取り組みがありますが、エンジンからCO2を回収することは現代の技術では事実上不可能。

一方で電気自動車は火力発電由来の電力であってもCO2を回収するメドは立っており、将来的には再エネへの転換によってWhell to Wheelでのゼロエミッションが実現する可能性もあります。

 

ということで環境問題を突き詰めて考えると、二酸化炭素の排出を「量」だけで議論することはナンセンスであり、「質」も考慮すると自動車のソリューションはEV一択となります。

 

あなたはそれでもまだ、CO2排出「量」だけで自動車の将来を語りますか?

 



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