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全方位戦略とかいう無策を問題視しない自動車業界の怪奇現象

投稿日:2018年11月4日 更新日:

責任は俺がとる、なんて聞いたことない

ことの発端は、TomoTaka ⊂(・___・)⊃@tomo_0stさんのツイート。

 

私と上司のめぐり合わせがたまたま良くなかっただけかもしれませんが、自動車メーカー勤務時代に「責任は俺がとる」なんて冗談でも聞いたこと無かったですね。

世に出ている自動車の多くは一見してスマートに生まれてきているように見えるかもしれませんが、まあ内情はドロドロしています。

 

特に潜在的問題分析(PPA:Potential Problem Analysis)というやつが曲者でして。

潜在的問題分析

目的を予定通り達成する可能性を高めるためのプロセスである。プロジェクトで起こりうるリスクの原因に対処しその発生確率を低める予防対策と、リスクの影響に対処しその重大性を低める発生時対策の両方を考える。

いずれも効果とコストのバランスを考慮して実施する対策を決めて必要な資源を割り当てる。

本来これはリスクをはらむ案件に対して費用対効果の観点でリソースを配分する考え方なのですが、いつしかその考え方は曲解され、期待値もわからぬまま絨毯爆撃的に別案を用意することを正当化する言葉になってしまっています。

 



全方位戦略は無策に等しい

潜在的問題分析(PPA:Potential Problem Analysis)の曲解が行きつくところまで行ってしまった事例がこれですね。

潜在的問題を見越して「あれもやります、これもやります」と言われると上位者としてはなんとなく心が安らぐと思いますが、そもそも現場の中間管理職レベルで戦略戦術を正しく認識している人は少ないです。

  • 戦略:目標を達成するための総合的・長期的なシナリオのこと。かなり抽象的な概念です。
  • 戦術:戦略を履行するために必要な手段のこと。より具体的な概念です。

これは単なる言葉遊びではありません。

戦術レベルの構想なのに「部長、いい戦略ができました」「キミ、いい戦略じゃないか」などと、トンチンカンな意思決定がなされるのです。

 

したがって、「あれもやります、これもやります」と全方位戦略を提案しているのは、誤った潜在的問題分析から得られた手段、すなわち戦術を無差別に羅列しているだけなので、戦略レベルでは無策に等しいということなのです。

 

意思決定のブルウィップ効果

ブルウィップ効果をご存じない方のために。

ブルウィップ効果とは

需要を予測しながら発注する形態の流通経路で見られる現象である。わずかな需要の変動が累乗で増幅され伝達されていく様子のこと。

具体的に説明すると、例えば完成車を1台作るのに1個必要な部品が自動車メーカーから100個発注されたとします。

この部品を自動車メーカーから受注したTier1サプライヤーは、在庫を切らさないために105個(+5%)準備します。

さらにそこから部品を受注するTier2サプライヤーも、在庫を切らさないために110個(+5%)準備します。

これを末端に至るまで繰り返すと、鞭(Bullwhip)を打つように在庫が指数関数的に増大し、コストが膨れ上がるという現象です。

親会社様はお客様とお呼びっ!

 

日本の自動車メーカーの製造現場は優秀なので、こんなアホみたいな現象を野放しにするはずがありません。

 

ところが、組織の意思決定においてはブルウィップ効果によって生み出された意思決定の在庫、すなわち誤った潜在的問題分析から得られた「戦術の在庫」が増幅しても野放しになっています。

 

なぜ過剰な部品在庫を問題視するのに、過剰な戦術在庫は問題視しないのでしょうか?

戦術(=手段)はタダで生み出されるとでも思っているのでしょうか?

もはや怪奇現象です。

 

意思決定におけるブルウィップ効果を排除するには、まずはこの問題を認識すること。

そして潜在的問題分析に費用対効果という観点を取り戻し絨毯爆撃をやめること。

 

そうすれば、冒頭に紹介したツイートにあるように、再びウォークマンのような革新的なプロダクトが生み出せるようになるのではないでしょうか。

 



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