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スバル、エンジンのバルブスプリング不具合でのリコールがヤバい4つの理由

投稿日:2018年10月27日 更新日:

エンジン部品で大規模リコール

スバルが、エンジンの部品が壊れる恐れがあるとして、複数の車種について大規模なリコール(回収・無償修理)を近く国土交通省に届け出ることがわかった。国内だけでなく、海外で販売した車種にも影響が及ぶ可能性がある。対象は少なくとも数十万台にのぼる模様だ。

Source: 朝日新聞

SUBARU(スバル)は1日、バルブスプリングと呼ばれる部品の不具合のため、走行中にエンジンが停止する恐れがあるとして、「インプレッサ」など4車種計10万1153台(2012年1月~13年9月生産)をリコールすると国土交通省に届け出た。海外でも約31万台のリコールを実施。海外分の車種は明らかにしなかった。

Source: SANSPO.COM

 



リコールの原因はただのバネ

リコールの原因となった「バルブスプリング」という部品は、モノとしてはコレです。

びよよ〜ん

ただのバネやん・・・。

そう!ただのバネでリコールです。

 

 

んでもって、スプリングメーカーであるニッパツの株価は、どーーーんw

 

バルブスプリング不具合がヤバい4つの理由

スバルにとってこのリコールはよくある不具合とは一味違うヤバい案件であると思われますので、その理由をご説明します。

 

作業工数のかかり方がヤバい

スバルの水平対向エンジンは、バルブスプリングの交換は結構たいへんな作業になります。

バルブスプリングにアクセスするには、車両からエンジンを降ろして、エンジンヘッドのカバーを外して、カムを外さないとたどり着くことができません。

 

これがよくある直列のエンジンだとヘッドが上に向いているのでボンネットフードを開ければそのまま作業できるんですが、スバルの水平対向エンジンはヘッドの両サイドにボディが迫ってきてるので、車載状態でバルブスプリングを交換するのは困難です。

 

この点について、自動車評論家の国沢光宏氏はブログ「作業難易度は高いがエンジンを降ろさずに作業出来る」と述べていますが、私はエンジンを車載した状態で作業するのは非現実的であると思います。

おっしゃるとおり、おそらくエンジンとボディの間に片側5〜10cm程度ずつ隙間はあると思うので、ユーザーが自宅のガレージで勝手に作業するレベルであれば可能でしょう。

しかし、リコール対応でサービスマンが作業するとなると、ある程度の作業品質が要求されます。

 

例えば、各ボルト・ナットにはトルクレンチによる締結管理が求められますし、部品の組付けも手探りでの作業(いわゆるメクラ作業)は誤組や脱落による二次災害の原因となるのでNGのはずです。

したがって、しかるべき作業品質を保証するのであればエンジン降ろしは必須。

 

エンジンを降ろすとなると、おそらく工数は短くても1台あたり4時間、下手すりゃ8時間(丸一日)コースですが、こんな重整備を販売店でやろうものなら現場はパンクしてしまいます。

このためユーザーには代車を提供し(代車繰りも大変そうだけど)しばらく車両を預かって、工場やモータープールなど広大な土地がある拠点で専用の治工具を使って一気に処理するというのが現実的な対応になります。

 

この点について、朝日新聞は次のように報じています。

エンジン部品の不具合で国内外41万台のリコール(回収・無償修理)を届け出たスバルが、群馬県など国内8カ所に整備拠点を新たに設けたことがわかった。リコールを受け持つ販売店の負担を軽減し、対応を急ぐねらいがある。

拠点は群馬県2カ所のほか、東京、岩手、栃木、愛知、滋賀、愛媛の6都県に各1カ所。販売店で回収した対象車を整備拠点に集めて交換する。交換にかかる日数は、車両を移動させる時間を考えると1週間ほどになる場合もあるという。

Source: 朝日新聞

 

このようにリコール対応はスバルにとっても顧客にとっても長期化する可能性があるのです。

 

エンジンのリコール怖い・・・。

 

リコールの規模がヤバい

対象はインプレッサ、フォレスター、BRZの3車種。

特にインプレッサとフォレスターはスバルの販売を支える主力車種です。

リコール対象車は国内で約10万台、海外で約30万台、世界全体で40万台以上にのぼるとのこと。

 

リコールの場合は必要な費用はユーザーに請求されませんが、エンジンを降ろすとなると工賃は10万円程度の相当します。

ユーザーへの各種案内や交換部品費、車両輸送などを含めるともう少し膨らむ可能性があります。

仮に1台あたりの対策費を10万円程度とすると、数百億円規模のリコールになるものと推定されます。

 

これに関しては、Bloobergが550億円と報じていますね。

同社独自の水平対向エンジンに設計ミスがあり、想定以上の負荷がかかることで、バルブスプリングが破損してエンジンが停止する恐れがあるとしている。同リコールに関しては550億円の費用を18年4−9月期決算で引き当てた。

Source Bloomberg

 

スバルの営業利益は4000億円足らずなので、リコール対応だけで10%以上の減益。

さすがに某エアバッグのリコールはもう二桁ほどリコール対策費が大きかったので、さすがに会社が倒産するほどの案件ではないと思いますが、経営的にもかなりの痛手です。

 

また、日本国内の新車販売台数が16万台程度のスバルが、日本国内だけで約10万件のリコール客を捌ききれるかも不透明です。

 

エンジンのリコール怖い・・・。

 

最悪時に発生する事象がヤバい

バルブスプリングが折損すると、エンジンの燃焼室の吸気側と排気側についているバルブのどれかが閉じなくなります。

 

軽症の場合は、ピストンで圧縮するときに混合気が燃焼室の外に漏れてしまうので、不正燃焼や失火が起きて出力が低下します。

不正燃焼や失火が起きると排気ガスの成分が異常値を示していることが各種センサーで検知されるので、メーターの警告灯が点灯するはずです。

警告灯が点かなくても変な音がするかもしれないので、なるべく早くディーラーに持ち込みましょう。

 

重症の場合は、開きっぱなしになったバルブとピストンが衝突して破損し、破片がピストンとシリンダーの間に噛み込まれて焼き付きます。

この状態でも正常な気筒はクランクシャフトを無理やり回転させてしまうので、コンロッドには過大なストレスがかかってボキッと折れる可能性があります。

そして折れたコンロッドの先端がウォータージャケットを突き破ると冷却水漏れ、シリンダーブロックを突き破るとオイル漏れ。

運悪く漏れたイルが排気系に飛散すると車両火災・・・。

 

ユーザーの方を脅すような書き方で申し訳ないですが、リコールの定義は「自動車の安全・環境基準に適合しない(適合しなくなる恐れがある)場合に、販売メーカーが車両を回収し無料で修理する制度」です。

したがって、スバルの例に限らずリコール案件というものは、最悪の場合はユーザーの安全が脅かされる案件ということです。

 

エンジンのリコール怖い・・・。

 

枯れた部品でリコールが出るあたりがヤバい

さきほどバルブスプリングを「ただのバネ」と形容しましたが、「ただのバネ」にもそれなりにノウハウはあります。

しかしながら、さすがに何十年もエンジンを作ってきた会社にしてみれば、やはりノウハウが確立されているはずの枯れた部品です。

 

スバルは中島飛行機時代も含めると創業100年を超える老舗。

旧軍の戦闘機のエンジンも作ってきたエンジン界の名門中の名門です。

空冷式航空機用レシプロエンジン「誉(ほまれ)」(1942年生産開始)

 

そんな名門のスバルであっても、いまだにこんな枯れた部品でリコール出しちゃうんです!

そしてたかがバネひとつの不具合で数百億円が吹き飛んでしまうのです!

 

これが21世紀になって初めて採用された新機構や新材料なら話はわかるのですが、バルブスプリングなんてレシプロエンジンのごく初期から採用されている部品です。

いかにエンジンというものがバネひとつとっても得体の知れないものであるか。

 

エンジンのリコール怖い・・・。

 

ゲームチェンジャーがエンジンを避ける理由

一般的に、自動車エンジンの部品点数は1万点とも2万点とも言われます。

これらの部品のほとんどは、標準化もモジュール化もされていないバラバラの形をしており、排気量やエンジン型式によっても形状が変わります。

そしてこれらの部品それぞれが、リコール一発で数億〜数百億円を吹き飛ばすリスクを背負っているのです。

 

一方で、EVであれば部品点数は数百点程度。

EVは車格や要求性能が変わったらモーターなどのモジュール部品を入れ替えたり、バッテリーの個数を変えるだけ(言葉で言うほど簡単ではないですが、エンジンよりははるかに簡単)。

スケーラビリティとフレキシビリティに優れています。

当然のことながら、部品点数が少なくなれば開発効率は向上しますし、品質管理もラクになるのでリコールのリスクも下がります。

 

今回のスバルの件は設計不良っぽいですが、エンジンが設計・製造・品質管理などあらゆる領域でいかに高い参入障壁に守られているか。

 

「擦り合せ型」のモノづくりなんて開発効率は悪いわ品質管理もシビアだわで、新規参入メーカーにとってはハイリスク・ローリターンすぎて怖くて手が出せないわけですよ。

テスラやダイソン、NIOなど、ゲームチェンジャーがこぞってEVを作りたがる理由を端的に表すものだと思います。

 

まとめ

高度な技術は戦いを勝ち抜くために必要ですが、あまりに高度化しすぎると仲間がいなくなるんです。

燃料電池は完全にその罠にハマって自滅してしまいましたし、エンジンも同じ文脈で敬遠されつつあります。

 

欧州のクリーンディーゼルなんて顕著ですね。マツダなんて孤立しちゃってます。

自動車ビジネスは法規が変わると急に風向きが変わります。

どれだけ突き抜けた技術でドヤ顔していても、業界で孤立してしまうと法規誘導なんて不可能

法規誘導の主導権を失うということは、殺生与奪を他者に握られてしまうことと同義。

 

「最近マツダ生意気だな。そろそろディーゼル廃止にして息の根止めようぜ」みたいなことが起こり得るのです。

 

ということで、これからのエンジンには高度なメカニズムよりも、誰でも作れる「サルワカな技術」で業界仲間たちがEVに逃げないようにすることが望まれています。

誰でも作れてアホでもパクれるエンジンを目指さないと、EVに淘汰されて消えちゃいますよ。

 

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