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もの作りに従事する人にこそ読んで欲しい「21世紀の資本」

投稿日:2018年6月25日 更新日:

私は長らく大手自動車メーカーの中に身を置いていたのですが、わりと製造現場に近い部署だったこともあってか、モノ作りに対する崇拝というかプライドみたいなのが強い職場が多かったです。

そのような職場でマネーや資産運用の話をすると、「汗水垂らして働いて実物を生み出すことこそ正義であって、金融なんて虚業だ」などという意見を耳にすることがありました。

モノ作りに限らず経済活動を行なうためにはお金が必要であることは誰しも認識しています。それでも「金融は虚業」という見方がはびこっている状況に私は違和感がありましたので、今日はお金について解説してみようと思います。

金融は虚業という誤解

金型で部品を作るにもプログラムのソースコードを書くにもお金は必要。だけどどこまで行ってもお金は価値を生み出すための手段であって、経済活動の目的にはなり得ないんです。

 

あなたの会社の基本理念を見てくださいよ?ひたすら金儲けせよ、なんて書いてあります?

トヨタの基本理念

日産のミッション

ホンダの社是

 

書いてないですよね?会社によって言い回しは異なりますが、要は何かしら社会や顧客に価値を提供することを是としているはずです。

トヨタなんて無茶苦茶キャッシュリッチな会社ですが、「金稼いでナンボだで(三河弁)」なんて企業理念に一言も書いてありません。

 

自動車メーカーをはじめ企業というものは資本主義というルールの中で生きています。だから資本主義社会で生き抜くためには資本主義のルールを知るべし、というのは当たり前のことだと思います。

麻雀で勝つにはルールを知らないと勝てない、というのと同じです。ちなみに私は麻雀のルールは詳しくないのでクッソ弱いです。

 

ということで、今回はモノ作りに従事する人が最低限身につけておいて欲しい資本主義のお話をご紹介します。

 



異例のベストセラー経済本

2014年、フランスの経済学者トマ・ピケティが一冊の経済書を発表しました。その名も「21世紀の資本」

5940円という価格と700ページ以上にも及ぶ異例の大作は、発売わずか1ヶ月で13万部を売り上げるベストセラー本となり話題となりました。また、あまりのボリュームに読破できずに挫折する人が続出したともいわれています。

ピケティの論説が従来の研究と一線を画するのは、長期にわたるデータにもとづいて経済格差と分配について研究したという点です。

19世紀のデヴィッド・リカードやカール・マルクスなども同様の論説を提唱していますが、これらはあくまでも理論中心でありデータの裏付けが乏しいものでした。

また、20世紀にはノーベル賞学者サイモン・クズネッツが格差に関する研究をしていますが、第2次世界大戦前後の特殊な時代にフォーカスしたものであり、裏付けとなるデータの量も乏しいという欠点がありました。

 

ピケティが導いた結論

$$r>g$$

資本収益率rは所得の成長率gを上回る。超シンプルですがピケティの結論は以上です。

理論はともかくとして、数百年にもおよぶデータに基づけば「労働で得る富よりも、資本から得る富のほうが経済成長が早い」ということをピケティは見出しました。

もう少し詳しく説明すると、株や不動産、債券などに投資することで得られる財産の成長率は、給与所得者の賃金が上がる率よりも常に高いということです。

すなわち富裕層は株や不動産を保有しているだけで大きな利益が得られる一方で、労働者は働けども働けど働けど豊かにはならないということです。

 

端的にいうと、この世は「働かなくても金持ちはますます金持ちになる」という法則に支配されているのです。

身も蓋もない話ですよね。でも歴史が私たちに突きつけている事実はそういうことです。

 

金持ちの子供はだいたい金持ち

これまた夢の無い話です。

発展途上国など人口が増大している国では、親世代の財産を子供が分け合って相続します。このため世代間で富の分配が進み格差は生じにくいとされています。

一方で、日本など先進国では少子化が進んでいる社会においては、親世代の経済的・社会的地位が子供世代にそのまま相続されてしまうので「金持ちの子供は金持ち」という構造は強化され格差が拡大する傾向にあるとされています。

貧乏人が貧乏人を再生産する、と表現すると角が立ちますが、逆に言えばそういうことです。

したがって、どこかで労働者として時間を切り売りして富を得るスタイルから、築いた財産で富を得るスタイルに転換しない限り、あなたは末代に渡ってピラミッドの下の方から逃れられないのです。

サラリーマンでもいますよね?同じ給与体系の中で働いているはずなのに、高級車を乗り回していたり、豪邸に住んでいる不思議な人。

 

もちろん無理して借金している人もいると思いますが、涼しい顔してるのはだいたい金持ちの子供か副収入がある人だと思います。

なぜか20代のヒラ社員が休日にLC転がしてたりする

 

「あちら側」を目指そう

こうした格差問題に対して、実はピケティ自身も明確で有効な答えを示せていません。

税制改革による富の再分配や教育投資、社会保障政策の拡充などをもっとおこなうべきではないかということは仄めかしていますが、実現性に乏しいという意見もあります。

だからといって短絡的に「みんなで投資をしよう!」などと煽るようなこともしていません。

 

ただ、戦争や大災害などが発生しない限り労働者という「こちら側」よりも資本家という「あちら側」のほうがオイシイということを、かなりの信憑性を以って示していることも事実です。

したがって個人の生存戦略としては、リスクが管理できる範囲で積極的に投資に参加すべきと読み解くことができるのです。

 

モノ作りにプライドを持っている人こそ投資を

モノ作りにプライドを持っている人にとって、「虚業」たる投資に生き甲斐や価値を見いだせるか難しいという意見がありますが、私はモノ作りにプライドを持っている人こそ投資に参加すべきだと考えています。

 

というのは、製造業に限らず会社の仕事というものは「自分で作った製品を自分で買いたいほど愛着のある仕事」もあれば、「好きじゃないけどお金のために渋々やる仕事」というのも少なからずあるためです。

 

例えば「大手企業からベンチャーに転職して自分の技術力を試したいけど、どこに行っても給料が下がるので躊躇している」みたいな場合、あなたはどうしますか?

家庭があるとなかなか思い切った判断ができないと思いますが、ここで仮に株式などの配当収益によって生活の基盤を支えることができていればどうでしょうか?

一度しか無い人生で、思いっきり自分の技術力を試すことができるのではないでしょうか。

 

だから私はモノ作りにプライドを持って取り組んでいる人にこそ、正しいマネーリテラシーを身につけてもらいたいと思っています。

 

「21世紀の資本」を詳しく知るには

「21世紀の資本」は「金持ちはますます金持ちになる」「金持ちの子供は金持ち」といった、みんなが薄々気づいていたことを長期的なデータに基づいて裏付けるというショッキングな内容であったため、ベストセラーとなりました。

 

ただ、原書は5940円という価格と700ページ以上にも及ぶボリュームもあって、ハッキリ言って読破するのはかなりハードルが高いです。

このためたくさんの解説本が出ていますが、一番手っ取り早く要点を抑えられるのはまんがでわかるピケティの「21世紀の資本」です。

モノ作りの現場では遅くまで残業している方も多いと思いますので、まずは解説本でサクッと要点を抑えるのをオススメします。

 

マンガだからといって侮ることなかれ、この本は原書を含め私が読んだ中で一番分かりやすかったです。むしろ原書はマンガで要点を抑えてからでいいと思います。

ただ、くれぐれもこの本は会社の机の上に置きっぱなしにしないでくださいね。金融リテラシーの低いおっさんに守銭奴(あるいはオタク)呼ばわりされちゃいますよw



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