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エンジンの進化にまつわるパラドックスの正体

投稿日:2018年5月24日 更新日:

エンジンが進化すればするほどEVが有利になる

かつては燃費や排ガス性能は、頑張れば頑張るほどユーザーや社会の利益になっていました。

ところが代替手段たる電動技術が実用に耐えうるようになってくると、内燃機関技術は頑張れば頑張るほど自分の首が締まるようになってきているんですよね。

今回はこのエンジンの進化にまつわるパラドックスについて解説しましょう。

 



燃費向上でガソリンスタンド網が壊滅

ガソリンスタンドは給油してもらってナンボの商売です。要はエンジンに食わせてもらってる業界なんで、クルマの燃費が良くなれば潰れるのは容易に想像がつきますよね。

実際、日本国内ではクルマの燃費がよくなったせいでガソリンスタンドの数が減り続けています。

ヤバイですね。でもクルマの燃費は年々向上しているので、この流れは止まらないでしょう。

SS業界の先行きを考えると、設備の更新や改修などまとまった資金が必要になるタイミングで廃業という選択をする事業者は増えていくでしょう。

 

一般に、自動車のインフラはネットワーク効果(ネットワーク外部性ともいう)が働くといわれています。

ネットワーク効果とは、顧客が増えれば増えるほどネットワークの価値が高まり、顧客にとっての便益が増すことをいいます。この場合の顧客はガソリンの需要家ですね。ガソリンの需要家が増えれば増えるほど、ガソリンスタンドのインフラ網の価値が高まるのです。

また、ネットワーク効果が働くサービスや製品は品質や技術よりも利用者の数によって得られる便益の方が大きいので、あるサービスや製品が一旦シェアで優位になると、爆発的にユーザーが増加する傾向があります。

しかしひとたびネットワーク効果にほころびが生じると、加速度的にユーザーが減少するという特徴もあるのです。

 

現在はエンジンの進化がガソリンスタンド業界に逆噴射をカマしている状態であり、ユーザーのために良かれと思って燃費を改善すればするほど共依存関係にあるガソリンスタンド業界が蝕まれるという状態です。

 

排ガス性能の進化で仲間がいなくなる

欧州でのフォルクスワーゲンやメルセデスなどのディーゼル排ガス不正問題しかり、三菱やスバルの燃費不正問題しかり、もうエンジンは環境性能と商品魅力がピンポイントでしか成立しなくなっていることはニュースを見ていてもわかるのではないでしょうか。

 

それでもなんとか電動化の流れの中で生き残るためには、排ガス性能を先鋭化せざるを得ない。でもこの路線を突き進むとどうなるでしょうか。

技術が進歩すればするほど各社の対他競争力は上がるのですが、競合がついて行けなくなります。ヨーロッパのディーゼル市場なんかは顕著ですね。もはやフォルクスワーゲン、トヨタ、ホンダなどは撤退を表明しています。

マツダだけはSKYACTIV-Dで孤軍奮闘していますが、まあここに追随する者はもういないでしょう。なぜなら、競争力のあるエンジンを新しく生み出すにはカネも時間もかかりすぎて経営効率が悪いから。

ディーゼルに限らず内燃機関は賞味期限切れ。

産業史的の大きな流れから見て美味しく食べられる時期は過ぎているんじゃないかと思います。

そこに電動という代替技術があるとなれば、そりゃあみんなそっちにシフトしますよね。

 

自動車産業は巨額の資金と大量の雇用を支える国家ぐるみのビジネスなので、欧州や中国なんかはサッサとでエンジンには見切りをつけて、EVやPEHVが有利なようにルールを作り変えてしまいました。当たり前ですよ。自国企業が不利なルールを放置すれば雇用が不安定になり、政権の支持基盤が揺らいでしまいますからね。

かくして、市場のルールが変わってしまった中国なんかではEVが売れています。欧州もジワジワきてます。

 

それに対するエンジン車は、EVに負けじと環境性能を追求すればするほど、競合はサバイバルできなくなり次第に仲間は減っていくことでしょう。

 

エンジンが生き残る2つの道

エンジンが生き残る道は2つ。

 

1つ目の燃費の向上がガソリンスタンド網を壊滅に追い込むという件は、エンジン車と共依存関係にあるガソリンスタンド網を蘇生するしかないでしょう。

手っ取り早い処方箋は、燃費をもの凄く悪くする!

これでもうガソリンスタンドは商売繁盛、ウハウハですよ。ユーザーはガソリン代が高くなって死にますけどねw

 

2つめの排ガス規制がEVの普及を後押しするという件は、エンジンの技術水準が低い競合を手懐けるしかないでしょう。

具体的には、エンジンを無償で公開しましょう!すなわちエンジン技術のオープンソース化です。

優れたエンジン技術をタダでコピーしても良いという世の中になれば、もう電動に逃げる者はいなくなりますよ。エンジンで食っていた会社の競争力は無くなりますけどねw

 

ここまで読んでいただいた方にはおわかりかと思いますが、この2つの難問をクリアしない限りエンジンは自滅してしまいます。

 

国際的には内燃機関は減少トレンドにあることが予想されています。

経産省やトヨタなんかも同じような図表を公表しているので、この流れは業界的なコンセンサスがとれているんじゃないでしょうか。

「IEA エンジン」の画像検索結果

かといって、自動車メーカーも社内のエンジン部門に向けて「あなたたちの仕事はシュリンクしますので、キャリアの出口戦略を考えてください」なんて口が裂けても言えないでしょう。

なぜなら、組織というものは少しでも先行きが不透明になると優秀な人材から逃げていくから。そんなことやろうものなら目先の稼ぎが無くなってしまいます。

わざわざ、意思決定する立場にある人がそんな波風を立てるとも思えませんしね。創業家一族ならともかく、サラリーマン役職者は自身の任期を全うするまでは不都合な真実に目を背けて、逃げ切ることしか考えていません。

 

だから騙し騙しエンジン生産能力の自然減を図るんでしょうけど、頑張っても頑張らなくても報われない茨の道にあって、ソフトランディングは上手くいくんでしょうかね。

 



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