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ほとんどの人が気づいていない中国の自動車外資規制緩和の裏側

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中国の自動車外資規制緩和政策の概要

2018年4月10日、海南省で開催された「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」年次総会で、習近平国家主席は自動車産業の対外開放を進めると述べました。

これをうけ4月17日、中国政府は現在外資系自動車メーカーに課されている乗用車分野の出資規制を2022年に撤廃することを発表しました。

現在、海外の自動車メーカーは、現地の合弁事業に50%までしか出資できないかたちとなっていますが、18年中にはEVなどの新エネルギー車、20年にトラックやバスなどの商用車、22年に乗用車の規制が順次撤廃されます。

出展:SPEEDA

外資規制撤廃は「肉を斬らせて骨を断つ」政策

中国の外資規制撤廃を受けて、日経新聞は好意的です。

でもアノ中国が無条件に外資に有利な政策をとると思います?フツーに考えてありえないですよね。

日経新聞の頭の中、お花畑なんじゃないの?

一見、中国の大きな自動車市場が開放されてワーイやったー!みたいな気分になりますが、これは「肉を斬らせて骨を断つ」政策です。

※骨を切らせて肉を断つ:自分自身も傷つく覚悟をして、相手により大きな打撃を与えることのたとえ。

 

電動車技術発展計画に描かれたシナリオ

では外資規制緩和の裏側には何があるのでしょうか。

 

まず、中国は2012年に電動車技術発展計画「電動汽車科技發展"十二五"專項規劃(2011~2015年)」を公布し、新エネルギー車事業に国家として取り組むことを宣言しています。

 

当時の日本は初代のリーフが出たばかりぐらいの時期で「やっぱり日本のエコカーは世界最先端だ」的な頃だったのであまりメディアでは報じられていなかったと記憶していますが、実は中国は欧州やインドのEVシフトに先駆けた動きを仕掛けていました

昨年、中国政府がガソリンなどを燃料にする化石燃料車の生産・販売を禁止の検討を始めたと報じられましたが、これも長期計画に基づく既定路線であって、諸外国の動きをみて慌てて動いたような話ではないんです。

中国が化石燃料車の完全販売禁止を計画中

 

2018年になってようやく「EVシフト検討」とか言い出してる日本の政策は何周遅れだよって話です。

 

ではこの「電動汽車科技發展"十二五"專項規劃(2011~2015年)」に何が書かれているかというと、2015〜2020年の具体的な方針には次のようなものが掲げられています。

・次世代駆動蓄電池の技術路線に沿って、次世代の駆動蓄電池/燃料電池の産業化を開始させる

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・電動乗用車主導のビジネスモデルを確立し、インフラ施設ネットワークの発展を完備させ、車と同ネットワークの融合を向上させる

・2020年前後:各種の電動車普及の実現に技術支援を提供

Source: Marklines

なんと、蓄電池の研究開発やインフラ整備を重点的に行なうことを政策目標としていて、車の生産台数なんて眼中に無いんです!

すなわち、巨大な国内市場をテコにしてEVの中核技術であるバッテリーとインフラで国際的な主導権を握ることを狙っているわけです。

 

「ホワイトリスト」という罠にハマる日本の自動車メーカー

日本の自動車メーカーは中国政府の意図なんて知ったこっちゃないので、外資規制撤廃の発表を受けここぞとばかりに中国市場で台数を稼ぐ構えです。

トヨタ自動車は4月25日に開幕した北京国際自動車ショーで、自社開発のEVを中国で生産して20年に発売する戦略を明らかにした。ホンダもEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など20車種超を25年までに投入する計画を発表。中国でのビジネスチャンス拡大の可能性は大きく広がってきた。

Source: 日経新聞

中国でエコカーとして補助金を受けるためには、搭載したバッテリーが「ホワイトリスト」登録企業から供給されていることが義務付けられています。

この「ホワイトリスト」にはCATLを筆頭に、BYD、万向集団A123など中国の地場メーカーがズラッと登録されていて、パナソニックやサムスン、LGケミカルなどリチウムイオン電池で国際的に競争力をもつ外資系企業が除外されています。どう見ても恣意的で不公平なんですが、こういうエグいことを平気でやるのが中国(最近、認定基準が緩和さたという情報がありますが)。

 

中国で電動車を売るには中国のメーカーからバッテリーを調達する必要があるため、取引量が増える中国のホワイトリスト企業の国際的なコスト競争力はどんどん向上します。

一方、バッテリーは完成車全体のコストに大きく影響する部品ですので、自動車メーカーとしては中国向け以外のクルマでもホワイトリスト企業からバッテリーを調達してコスト削減を図りたくなります。

 

つまり外資規制撤廃で海外の自動車メーカーに市場を開放するのは、ホワイトリスト企業の競争力を強化し電動車の中核部品であるバッテリーの世界的な覇権を握ることが狙いです。巨大な中核部品メーカーにとって完成車メーカーなんぞは手のひらで踊らされるプレイヤー程度の認識でしょう。

やべぇ、これお釈迦様の手の上の孫悟空と同じじゃん!さすが中国、西遊記の世界観だね!なんて感心してる場合じゃない。

 

このままでは近い将来、安くて圧倒的な量産実績を誇る中国製のバッテリー無しには世界の自動車産業は成り立たなくなるでしょう。一昔前のパソコンの「インテル入ってる」じゃないですが、クルマも「CATL入っている」になりそうな予感。

以上、あくまで推測ですが、これが本当なら中国の戦略おそろしや・・・。

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