日本自動車工業会(自工会)が9日発表した2017年度の乗用車市場動向調査によると、車を保有していない10~20代の社会人のうち「購入したくない」との回答が前回調査に続いて5割超に上った。利用手段としてはレンタカーやカーシェアリングへの関心が高く、車の維持費などに負担を感じて「所有」にこだわらない若者が増えている傾向が改めて浮き彫りになった。
Source: Sankei Biz
離れて行ったのは自動車メーカーじゃないの?
「若者のクルマ離れ」と言われて久しいですが、実は作り手や制度設計者が価値観の変化に取り残されてるだけじゃないの?という気がします。
もはや若者は「所有感(という幻想)」や「ステータス(という虚栄)」に騙されません。
潮目が変わったのは2011年の東日本大震災。何かを背負うことに対するリスクが顕在化したことによるのではないでしょうか。
この件は読者の皆さんにも一家言あると思いますので、このへんにして。
とりあえず記事の元ネタとなったデータを見てみましょう。
自工会の「2017年度乗用車市場動向調査」
ソースはこちらです。
若年層の車に対する関心
実は関心度は前回調査より向上しています。
特にファミリー層や地方居住者がポイントアップに寄与しています。このへんは若者の地方移住志向が強まっていることとリンクしているのかもしれません。
若年層の車購入意向
ニュース記事だけを見ると
「若者がますますクルマ離れしてるうぅー。クルマ社会\(^o^)/オワタ」
という印象を受けますが、実は「買いたい」「まあ買いたい」層は前回から増えています。
若年層が車を買いたくない理由
これはなかなか興味深い内容ですね。
車を買いたくない理由の多くが経済的事情やクルマが無くても生活できる、駐車場が無いといった周辺環境にまつわるものがほとんどで、乗りたいクルマが無いとか商品に不満があるという割合は低いです。
これはすなわち自動車メーカーがデザインや性能をどんなに磨いても、購買行動にはほとんど結びつかないということを示唆しています(逆説的に、商品力を切磋琢磨しているからこの程度で済んでいるという見方もできますが)。
問題の本質は周辺環境
JAMA(自工会)の調査結果に呼応するかのようにオートバイに関する記事も出ていました。
二輪メーカー各社が国内市場のテコ入れに躍起だ。販売台数は小型の原付きバイクを中心に減少に歯止めがかからず、大きな反転は見込めない。
Source: 毎日新聞
オートバイはクルマよりもっと状況は厳しいでしょうね。街を歩いても駐輪場は無く、道の隅っこに駐めようにも緑のオジサンが目を光らせている。

忌まわしい路上の死神
また自宅に駐めようにも、集合住宅などでは駐輪場は125ccの原付二種までってところが多いのではないでしょうか。
街にも家にも駐車場所が無い、天候に左右され稼働率が低いのでコスパが悪い、そして「バイクは危ない」という偏見があり周囲の理解が得られにくい。
正直これではスタイリングや性能を議論するところまで至らないです。
おそらくオートバイもクルマと同じく、売れない問題の本質は商品ではなく街づくりや法規、維持費など周辺環境の悪化。このため所有というリスクに見合ったリターンが得られなくなっているんですよね。
昔の人なら商品力を磨けば「所有感」や「ステータス」という言葉で騙された(?)んでしょうけど、これからの時代はコストに見合った価値を提供(MaaS)する路線にシフトしていかないと厳しいでしょう。