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自動車業界「2050年に消えるもの」

投稿日:2018年1月2日 更新日:

自動車産業のシンギュラリティで消えるもの

ドイツのフォルクスワーゲン(VW)も2016年秋に公表した新経営計画「トランスフォーム2025」で、モビリティーのサービス会社を目指す方向性を明確に打ち出した。その上で、注力する4分野として「コネクティビティ」「自動運転」「電動化」「カーシェア」を掲げている。まさに「CASE」だ。

この「CASE」が自動車産業で進化していくと社会にどのような変化をもたらすのか。自動車メーカーの経営者自身が「2050年に消えるものは、ガソリンスタンド、運転免許証、信号機、自宅の駐車場ではないか」と予言する。

Source: 現代ビジネス

人工知能の発明が急激な技術の成長を引き起こし、人間文明に計り知れない変化をもたらすという技術的特異点・シンギュラリティは2045年に起きると予想されています。

では自動車産業のシンギュラリティはいつ起きるのでしょうか。

 



自動車産業のシンギュラリティはいつ?

2016年9月のパリモーターショーで、メルセデスはクルマの新しい価値として「CASE」を提唱しました。CASEは、

  • Connectivity:コネクティビティ
  • Autonomous:自動運転
  • Shared:カーシェア
  • Electricity:電動化

の頭文字をとったものです。

 

この中でも、特にシンギュラリティ=技術的特異点を迎えることによるインパクトが大きいものについて考えてみましょう。

 

自動運転

自動運転の実現に際して鍵を握るのがAI(人工知能)

AIという言葉からロボットが人間の代わりに作業を行うという漠然としたイメージが浮かぶかもしれませんが、用途に基づいて大きく分けて、「特化型」と「汎用型」の2種類があります。

  • 特化型AI:特定の決まった作業を遂行するためのもの
  • 汎用型AI:特定の作業やタスクに限定せず人間と同様の汎化能力を持ち合わせているもの

 

このうち、自動運転で考慮すべきは特化型AIです。

2016年に米グーグル傘下のディープマインド(英国)が開発し、囲碁で人間のプロ棋士を破ったのも特化型です。

自動運転に関しても囲碁と同様に「特定の決まった作業」を遂行するためのものですので、特化型が求められます。

一般にシンギュラリティというと「汎用型AIが人間の知性を超える技術的特異点」のことを指しますが、特化型AIの領域においてはシンギュラリティはすでに起こり始めています。

 

現在、自動運転は人間に求められる介入度合いによってレベル0〜5に分類されています。

Source:日経新聞

概ねレベル0〜2が既存の運転支援の延長にあるもの、レベル3〜5が無人運転を指向するものです。

おそらく一般の人が想像する自動運転のイメージは「電車のようにスマホをいじったり寝たりしているうちに目的地に着く」ことだと思いますので、レベル4の実現が自動運転のシンギュラリティと定義づけることができます。

 

自動運転の開発については各社がロードマップを示しています。

Source:『週刊エコノミスト』2016年6月28日号<6月20日発売>20~22ページ)

 

レベル4の実現は、公共交通機関との連携を目指すベンチャー勢が2020年頃、欧米勢は2025年頃の実用化を目指しています。

日本の大手はわりと保守的な見解を出していますが、それでも2030年頃には実用化するとみられます。

 

これに基づくと、

  • 2020年:コミュニティバスやタクシーなどで無人の商用サービスが始まる
  • 2025年:自家用車のうち、高級価格帯モデルの一部で自動運転機能が搭載される
  • 2030年:普及価格帯モデルの一部で自動運転機能が搭載される

というのが想定すべきシナリオかと思います。

 

したがって、自動運転のシンギュラリティは2020年〜2030年と結論付けられます。

 

もちろん、規制当局の法整備によっては米国や中国では実用化されているのに日本だけ置き去り・・・なんてことも考えられますが、将棋や囲碁などと同じく自動車の運転に関しても、やがて特化型AIが人間の能力を超えるという状況は遠からず訪れるでしょう。

 

 

電気自動車

自動運転とともに大きな変化が予想されるのが電動化。

昨今の世界的なEVブームの背景は、技術的な要因と政治的な要因があります。

 

まずは技術的な背景。

こちらはバッテリーのコストパフォーマンスの著しい向上です。

 

電気自動車が一般に普及しない最大のネックになっているのが「車両価格が高いこと」ですが、車両価格にとって支配的なのがバッテリーのコストです。

実はこれを書いている2018年時点でも、金に糸目を付けなければエンジン車と遜色ない性能の車両を購入することは可能です。

テスラ・モデルS:航続距離500km以上、価格は1,000万円以上

でもモデルSは高いです・・・。

 

車両価格を大きく左右する車載用電池の開発動向については、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が技術トレンドに基づいて開発ロードマップを示しています。

Source: 東洋経済

 

例えばテスラがモデルSで採用しているパナソニック製の18650バッテリーは、エネルギー密度が250Wh/kg程度、コストが2万円/kWhといわれています。

このような車載用バッテリーが2025年頃にはエネルギー密度が2倍・価格が2分の1になります。つまりコストパフォーマンスでは4倍となる見通しです。

 

仮にこのロードマップのとおりにことが運べば、2025年頃にはバッテリーコストは4分の1となり電気自動車の価格は大幅に下落するはずです。

 

ちなみに実際は技術以外にも資源調達などがボトルネックになって開発が停滞したり、逆に青色LEDのような世紀の大発明によって一気に進むということもあり得ますので、このロードマップはもちろん外れる可能性もあります。

ただ、そんな枝葉の各論をいちいち考慮すると長期的なロードマップは立てられないので、NEDOの予測は現在の技術動向から「マクロ的な流れとしてはだいたいこんな感じ」と謳っているだけの話です。

 

 

次に政治的な背景です。

こちらは各国の規制動向と密接にリンクします。

 

端的に言ってエンジンに技術的な伸びしろはもうありません。

いや、実際はあるにはあるんですよ!あるんですけど、「エンジン熟成ゲーム」はハイレベルになりすぎて、おいそれと新規参入ができる状況ではないんです。

つまり事実上は既存の大手自動車メーカーと、自動車産業を抱える国家が利益を独占している状況。

 

こうした状況に対して、近年はエンジンの代替手段になりうる電動技術が熟してきましたため、新規参入勢は電気自動車にフォーカスし、またそれを支援する国家はこぞって電気自動車の普及を促す政策をとることで、ゲーム・チェンジを企てています。

この点については、欧米勢は大人?なのでEV化政策の意義を「CO2削減のため・・・」などとオブラートに包んで表現していますが、中国は2012年に政府が発表した「新エネルギー車産業発展計画(2012~2020)(国务院关于印发节能与新能源汽车产业发展规划(2012―2020年))」の中で、EV化の意義は新エネルギー自動車産業の育成と発展であると明言しちゃってます。

 

具体的な規制動向としては、主要各国では概ね2030年あたりからエンジン車が市場から締め出される見通しです。

 

したがって、技術的・政治的な側面の両面から考えると、電気自動車のシンギュラリティは2030年と結論付けられます。

 

まとめ

2016年の秋、私が「モビリティー革命2030」を初めて読んだときは2030年なんて遠い未来のような気がしましたが、2017年末に改めて読むとたった1年でずいぶん「革命」のリアリティが増した気がします。

 

世の中にはブラックスワン理論(ありえなくて起こりえないはずのものが起きる)というものがあるので、2050年という遠い先のことを論じても意味がないという意見があります。

強いてここで2050年に消えるものを挙げるとすると、運転手(という職業)、ガソリンスタンド、エンジンになりますが、そんな先のことはよくわかりません。

ブラックスワンちゃん

 

しかし自動車業界を取り巻く昨今の状況を鑑みると、2050年どころか現在の延長線上で予想できる2030年までに自動車業界が大きな変化を迎えることは確実といえるでしょう。

冒頭のタイトルは『自動車業界「2050年に消えるもの」』としましたが、私たち自動車ユーザーはそこまで待たなくても便利な生活を体験でそうですね。

 

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